今回は東京都の個人のお客様よりご依頼頂きました、アウディRS6アバントの天井張直しを紹介させて頂きます。
高級車や限定車では、天井の生地が本革やアルカンタラのお車があります。それらの素材も裏面にはウレタンを使用しているため、加水分解によりウレタンが劣化し垂れて来てしまいます。
通常のファブリック(布)生地の場合は垂れて来た生地を廃棄し新しい生地で張り替えるのですが、本革やアルカンタラの場合、ファブリックに張り替えてしまってはお車の価値が下がってしまうため、純正の生地を再利用して修理する張り直しがベストな選択となります。
今回も超高級車アウディRS6アバントですので、純正のアルカンタラを再利用するコンセプトで施工を行います。
それにしてもアウディRS6アバント、速いですよね。以前私がお客様から伺った話では、アウディRS6アバントの販売時期がフェラーリの新車種より若干早かった時期があり、フェラーリ側が先行してリリースされたアウディRS6 アバントの性能を見て、新型フェラーリの発売を延期したという話があります。
フェラーリの発売時期をずらすほど衝撃的なスペックを持つアウディRS6アバントですが、お値段も衝撃的で、新車だと家が建てられるくらいのお値段ですね。
フェラーリやカウンタック等のスーパーカーは見るからに速そうですが、一見普通のステーションワゴンの出で立ちながら、スーパーカーを凌駕するスペックを持っているアウディRS6 アバント。
かっこいいですね。
前置きが長くなりましたが、きっちり施工を進めていきましょう!
■ 施工前チェック
当店では施工前以下の項目をチェックします。これはお客様と当店の間で共通認識を確立し問題を回避するのが目的です。せっかくのご縁ですからお互い気持ちのよりお取引にしたいですからね。
・天井の状態
・劣化ウレタンのこぼれ具合
・電装系(点灯確認)
・動作系(サンルーフ等)
・車外、車内の傷

シックなダークグレーのアルカンタラに、LEDがオシャレ感をアップさせていますね。シートもオール本革で高級感爆上がりです。
全てのチェックを終え、天井を車外に取り出す為、各種パーツを外していきます。
■ 部品の取り外し
グレードの高いお車ですが、一般的なアウディと共用している部品もあります。アシストグリップなんかはその代表格ですね。また、今回は天井生地を再利用する為、張替えの時よりも天井生地に傷をつけない様作業を進めていきます。
擦れや衝突が予想される部位にはあらかじめ養生テープで養生をして作業を進めます。

大方部品が外れ、天井を落とすことに成功しました。

アバントだけあってリヤハッチバックがあるので、天井を曲げることなくスムーズに車外に引き出すことが出来ます。
■ クリーニング
天井を引き出したら次はクリーニング工程となります。劣化したウレタンくずや、劣化により発生したベトベト成分をブラシと溶剤で綺麗に落としていきます。
通用は天井のボード側のみクリーニングすればよいのですが、今回は既存の生地を再利用する張直しの為、生地の裏面も綺麗に仕上げていく必要があります。これが大変なんですよね。


クリーニングは地味で面倒な作業ではありますが、この工程で手を抜くと接着剤が全くつかず後々後悔することになるので、もうそろそろいいかなというレベルからさらにもう一段階ギアをあげての作業を心がけています。何事も前準備・下地・基礎作りは大切なのです。
■ 接着剤塗布、貼り付け
天井および既存生地の裏面が綺麗になったら、いよいよ接着剤を塗布して貼り付ける作業になります。
当店では既存生地の貼り直しの場合、二つの施工方法がございます。
・下地ウレタンを入れてその上に既存生地を貼り付ける
・下地ウレタンを入れずボードにダイレクトに既存生地を貼り付ける
どちらの工法を採用するかはお客様と相談し決定します。
下地ウレタンを入れるとフカフカ高級感が出るのですが、ウレタンを使用している為いずれまた劣化し垂れてきます。それに対しウレタン無しで直貼りをする場合、手触りは固くなりますが劣化するウレタンを使用しない為、二度と垂れない天井となります。
ただ、お客様のご希望とは別に、下地ウレタンを使用しないと貼れない天井もございます。
今回の場合事前にお客様と相談しお客様より、「希望はウレタン無しの直貼りですが、貼れなければ下地ウレタンを使用しても良いです。現場でご判断願います。」と言われていました。
クリーニングが終わった時点で、ボードの上にアルカンタラの純正生地を乗せてみたところ、ウレタン無しだとパーツを組み付けるための穴が合わない事、また若干生地が足りなくなることが分かったため、今回は下地ウレタンを使用した施工を選択することになりました。
下記の写真の奥側のボードが下地ウレタンを貼られて、純正生地を待つ天井ボードになります。
手前が既存のアルカンタラ生地の裏面に接着剤が吹かれたところです。

■ 完成
既存生地を再利用して貼り付けるのはなかなかスキルが必要な作業になります。
全ての穴の位置を合わせつつ、シワ無く貼り進めなければなりません。よって私は必ず一人で作業することにしています。
また特に冬場は接着剤の乾燥が早いため、慎重さとスピードが求められます。
必死に作業していた為、貼り付け作業の写真はありません。(スミマセン)
そして完成した天井をお車に組み付けたら完成となります。
施工完了の状態をご確認頂き、仕上がりに大変ご満足頂け、本日の作業終了となりました。
