今回は、当店としては初挑戦のお車、ジャガーXK R-Sの「天井張直し」を紹介させて頂きます。
通常の張替えというのは、垂れてきてしまった生地を廃棄し新しい生地を使用する施工方法ですが、対して張直しというのは、現在使用されている素材を再利用し施工するという施工方法です。
リサイクルできるからお安いと思われがちですが、張り直しの方が手間が多く時間もかかる為、張替よりお値段は高くなります。
しかし今回の場合の様に、純正で本革やアルカンタラ等を使用している場合は、純正感を保ったまま修理できるという大きなメリットもある為、割高でもご依頼頂くケースが多いです。
さて、初めてのお車の天井の状態を確認してみましょう。
本革ですね。
本革は、素材として布より重い為、一度垂れだすとあっという間に全垂れまで行ってしまいます。
それにしても車内が本皮で埋め尽くされていて、すごく高級感がありますね。
さて、初めてのお車のパーツを外していきますが、構造を理解していない為、壊さないように組み付けられ方を確認しながら外していきます。車の内張りはその殆どがクリップがネジでボディーに接続されていますので、まずはその部品がどちらの方法で接続されているかを検証します。また、2つの部品のどちらを先に外すのかも重要なポイントとなります。
しかしクーペだけあって外す部品は少なく、また、ドアがセダンよりデカいので、天井の引き出し作業は、天井にダメージを与えず引っ張り出せました。
さて、取り出したこの天井、通常の張替えであれば、表皮は剥がしたら廃棄してしまいますが、今回は表皮を再利用するため、ベースボードのクリーニングだけでなく、表皮の裏側のクリーニングも必要となります。この表皮の裏側のクリーニングがとにかく大変です。表皮は再利用するため、クリーニング作業時も表皮に汚れや傷をつけないよう、注意しながらの作業となります。
クリーニングが終わったら、まずベースボードに下地ウレタンを施工します。下地ウレタンを施工しないと、以下のような問題が発生します。
1. 本革を直接貼り付けると、下地のデコボコを拾ってしまい、表面がフラットにならない。
2. もともとウレタンが施工されているのが純正仕様なので、ウレタンの厚みが無いと、穴の位置が合わない。(専門的ですが。。。)
ということで、下地のウレタンを張付けた状態がこちら。
張替えであれば、この状態であとはお車に組み付けて終わりですが、張り直しはここからが本番です。
クリーニングが終わった本革の裏面に接着剤を塗布し、張付けて行くのですが、これがなかなか難しい。何が難しいかと言うと、すでに部品が取り付くための穴が開いているという事です。この穴位置がズレてしまうと、部品を組み付けたときにチラ見してしまいます。この穴位置を合わせつつシワが出ないように絶妙なテンションを掛け、全体のバランスも見ながら張付けていくことになります。穴の空いていない生地を貼り付けるのとは難易度が数倍違いますね。
張直しの場合は特に二人で作業したほうがやりやすいです。
穴ズレもなく綺麗に貼ることが出来ましたので、お車に組み付けて完成となります。
今回のような天井の素材が本皮だったり、あるいはスエード、ビニールの場合、ファブリック(布)素材に張替えてしまうと、お車の価値が変わってしまいます。
垂れてきてしまったけど、純正のままの復元をご希望の方は、ぜひ一度お問い合わせ下さい。