今回は神奈川県の個人のお客様よりご依頼頂きました、BMW Z4の天井張替えおよびA・Bピラーの張替えを紹介させて頂きます。今回もお客様が助手として施工に参加する「助手割引」での施工となりました。
ちょっとここでBMW Z4に関してですが、今回の施工まで私はBMW Z4はそのフォルムから完全なスポーツカーだと思っていました。しかし今回のお客様のお話を聞くと、BMW Z4は速さ・性能を追求するスポーツカーではなく、むしろ運転する楽しさ、気持ちよさをメインコンセプトにしているお車だという事でした。本日までの私の概念とは違ったコンセプトだったので、施工後ネットで調べてみたら、BMW Z4は、「ドライバーが車を楽しむことを優先している」「スーパーカーではなく運転して楽しい車」「日常でも使えるスポーツカー」「普段使い出来る大人のスポーツカー」という言葉が並びます。
なんか一度運転してみたくなってきました。
さて、今回の施工ですが、天井の垂れ・剥がれ・浮きの修理及びA・Bピラーの張替えなのですが、張り替える生地の色を純正とは違う色を使用するカラーチェンジを兼ねた施工となっています。そこで、お客様と当初予定の無かったサンバイザーに関して、この際天井に使用する生地を使用してサンバイザーも張り替えませんか?と提案させて頂いたところ、急きょサンバイザーの張替えも追加頂きました。
これだけの箇所の施工となると、さすがに私とお客様の2名ではこなしきれない為、当店スタッフ2名も加わっての施工となりました。
では施工、行ってみましょう!
■ 施工前チェック
施工に入る前に毎回施工前チェックを行います。助手割引の場合はお客様と一緒に、お客様がいらっしゃらない場合はケースバイケースで撮影を行います。作業に入る前にチェックを行う事で施工後の問題点の切り分けが出来、お客様も当店もスッキリ作業を終わることが出来ます。主なチェック項目と対応は以下の通りです。
・室内灯の点灯確認
特にサンバイザーのバニティーランプはあまり使われないお客様もいて、点灯するかどうかわからないという場合もございます。また長く使用していない場合接点に酸化被膜が溜まり、問題が無くても点灯しない場合もございます。いずれにしても点灯しなかった場合、何度か開閉を行い酸化被膜をワイピングにより除去し、それでも点灯しなかった場合は天井を車外に出した後、ランプが切れていないか、断線が無いかの確認を行います。
・天井生地の垂れ具合確認
天井生地が大きく垂れて部品を外すとシートまで垂れてしまう恐れがある場合はタッカーを打って暫定対策を行います。あくまでも天井を車外に取り出すまでの対策です。これを行う事により部品の取り外し作業時垂れて来た生地を頭からかぶってしまう等の問題を回避できます。
・劣化ウレタンのこぼれ状況確認
剥がれて垂れて来た天井生地の隙間から劣化ウレタンがポロポロこぼれて、シートやフロアに飛散していた場合、そのまま作業を進めてしまうと繊維の隙間にベトベトな劣化ウレタンを刷り込んでしまい、後のクリーニングが大変になります。まだこぼれて表面にいるうちに除去するのが吉です。
・メーターのアラート表示確認
エンジン起動時表示されるアラートの有無を確認します。当店ではアラートの解除は出来ませんが、施工後点灯したアラートが施工前からついていたアラートかを区別する為です。
・車内の傷確認
車内内装の内張りやガラスのフィルムに傷が無いか確認します。後部座席側の細かいフィルムの傷はオーナー様でもなかなか気づいていらっしゃらない場合も多いため、確認が必要です。
天井を確認すると、鋲で留められているのですが、不吉なシミがいたるところに。。。
これは、やってはいけない接着剤ではないでしょうか。

■ 部品の取り外し
施工前チェックが終わったらいよいよ内装部品を取り外して行きます。お客様は運転席に座って頂き私は助手席に座ってのフォーメーションとなります。
私と一緒の部品を右と左で同じタイミングで外していくというスタイルです。使用する工具および外すコツを説明させて頂きながらの作業となりますので、難しいことはなく楽しく作業頂けます。
BMW Z4は比較的外す部品の少ないお車の為、短時間で天井を車外に取り出せます。天井を取り出した後の車内を見ると、きっちりと断熱材が施されていました。やはり走りを追求したスポーツカーではなく、運転する快適さを追求しているお車だという事がわかります。


■ クリーニング
天井の車外取り出しが成功したら次はクリーニング作業となります。地味な作業ではありますが一番重要な工程です。他のお仕事でも派手な部分よりもその前段階の調査や資料作りをしっかりやる事が、成功につながると思いますがそれと一緒ですね。
当店では以下の3段階でのクリーニングを行っております。
【第一段階】
金属ブラシを使用して劣化ウレタンを除去していきます。裏面と表面を行います。
【第二段階】
アルコール系溶剤で残った劣化ウレタンのベトベト成分を溶かしていきます。マイクロファイバーウエスを使用して手でふき取っていきますのでゴム手袋をはめての作業となります。
【第三段階】
マップランプユニットやアシストグリップ等、へこみ部分はさらに強い溶剤で純正で使われている接着剤も溶かし除去します。この部分は天井の素材を出してしまいます。
しかし今回はかなりの接着剤が投入されていました。これは今回のお客様が投入したものではなく、その前のオーナー様がやられたらしいのです。この接着剤のシミが施工前チェックの時に見えたシミなんですね。天井張替え屋さんとしては、これは一番やめてほしい応急措置です。
自分の車の天井が垂れてきてしまい、何とか対策しようと考え、思いつくままにスプレー糊を購入し隙間から吹き付けたくなる気持ちはとてもよくわかります。しかし100%失敗します。どうしても垂れて来て運転の邪魔になるようであれば、是非ピン留めをお勧めします。
今回のような接着剤の残渣があると、これを除去するのがかなり大変で、事前にわかっている場合は、追加料金を頂くケースもございます。

■ ピラー張替え
私とお客様が天井のクリーニングを行っている間、他のエリアではピラー張替えを行うスタッフ、およびサンバイザーの張替えを行うスタッフがそれぞれのタスクをこなしています。




■ 接着剤塗布
接着剤を塗布する工程は、残念ながらお客様は参加できない工程となります。せっかくなのでやって頂きたい気持ちもありますが、やはり耐久性・品質を考えるとこちらで施工する必要があるのです。当店の作業にご興味のあるお客様は見学頂いても構いませんし、まかせるから大丈夫というお客様の場合は、昼食に出かけて頂いても構いません。
当店では天井張替えに2種類の接着剤を使用し、塗布方法も刷毛塗りとスプレー塗布の2種類で行っております。まずA接着剤を刷毛で重要部分に塗布ししっかり乾燥させます。乾燥後B接着剤を専用スプレーを使用して先ほどのA接着剤を塗布した部分を含めて全体に吹き付けていきます。もちろん貼り付ける生地の裏面にも吹き付けていきます。
また当店で使用している接着剤はF★★★★(エフフォースター)ランクの接着剤です。F★★★★とは建材や塗料から放出されるホルムアルデヒドの量を示す等級の最上位ランクで、JIS(日本工業規格)やJAS(日本農林規格)によって認定されています。★の数が多いほど安全性が高く、F★★(ツースター)、F★★★(スリースター)、F★★★★(フォースター)の順で等級が上がります。
最上位ランクの塗料を使用してはいますが、それでも完全乾燥までに3~4週間かかりますので、若干の溶剤臭が車内に漂う事があります。溶剤系の臭気に敏感なお客様もいらっしゃると思いますので、施工後は換気を多めにお乗りくださいます様お願い申し上げます。
【ライナーボード側】

【生地側】

■ 生地の貼り付け
この工程も残念ながらお客様は参加できない工程となります。
当店で使用している接着剤には開放推積時間と可使時間というものがございます。開放推積時間とは接着剤を塗布してから貼り付けるまでの時間の事で、ある程度乾燥させてから貼り付けるタイプの接着剤となります。また可使時間とは開放推積時間が終了してから張り付かないくらい乾燥してしまうまでの時間となります。
我々職人はこの可使時間内に作業を終了させないと密着不良を発生させてしまいますので、ある意味時間との勝負となります。またこの可使時間は同じ接着剤同じ塗布方法でも夏場と冬場でその長さが違ってきます。特に冬場は可使時間が短く乾燥が早いため、天井の種類によってはあらかじめ後から接着剤を追加で吹く事を前提とした貼り付け手順で進める事もございます。

■ 自動車難燃性保管基準
天井張替えを行った場合、意外と見落としがちなのが張り替える生地の自動車難燃性保安基準に関してです。
自動車の内装材(シート・天井・ドアの内張り)や車内用品等は、自動車火災時の安全性確保のため、燃えにくい(難燃)素材であることが道路運送車両の保安基準で義務付けられています。
道路運送車両の保安基準別添27に基づき、内装材の燃焼速度や自己消火性を評価するもので、試験は、米国のFMVSS No.302を基礎としています。水平状態で試験片にバーナー炎を15秒間当て、燃焼速度を測定します。燃焼速度が一定以下であれば「不燃性」または「自己消火性」と評価され、基準適合とされます。
天井・シート・ドアの内張り等を張替えた場合、張替えた素材がこの保安基準を満たしている、試験を合格しているという証明書が無いと、車検を通らないケースもございます。純正に限りなく近い素材であれば、張替えたオーナー様しかわからない為、車検の審査官に指摘される事は皆無ですが、明らかに張替えた事がわかるカラーチェンジ等の場合は注意が必要です。
当店で使用している生地は全て上述の難燃性試験を合格しておりその証明書もございますので、今回の様にカラーチェンジをされたお客様にはその証明書をお渡しし車検証と一緒に保管頂く事で、車検時指摘されても問題が起こらないよう対策しております。
■ トリミング・折り返し・穴あけ
ここからお客様再びご参加できます。
参加できるというのは強制ではないという事です。というのも、この工程ではカッターを使用する為、カッターで指を切ってしまう可能性がゼロではありません。お客様の職種の中には「手指に傷がある場合、お仕事をしてはいけない」という社内規定がある職種もあり、もしもカッターで少しでも指を切ってしまった場合お仕事が出来なくなってしまいます。当店で施工されたお客様の中でこの工程を上記理由で辞退された職種は以下の通りです。
・パイロット
・外科医
・SE
よって、上記職種の方はもちろん、カッターに自身の無いお客様は遠慮せずご辞退下さい。
さて、純正の天井は必要最低限の箇所しか折り返されておりませんが、当店では可能な限り全周折り返す方針で施工しています。折り返すことで際の綺麗さおよび耐久性が向上するからです。しかし上手く折り返さないと厚みが出て最終的に内装パーツを組付けた際、その厚み分上手くパーツが組み付きません。よって、折り返し部分が重ならないことが必須となって来ます。そのためには折り返した際折り返し部分が重ならないようなカットが重要です。
未経験のお客様が折り返し部が重ならないようにカットできる方は希少だと思いますので、私の方でカットのガイドラインを引かせて頂きますので、そのラインに沿ってカット頂ければ大丈夫です。

■ 部品組付け
最終工程。張り替えた天井を車内に入れて外した部品を一つずつ組みつけて行きます。「外した部品だからつけられるだろう」と思われがちですが、実は組み付ける方が難しいのです。取り外すときはクリップやネジの位置を意識せず外せばよいのですが、組み付けるときはクリップの穴位置に合わせたり、ねじの位置を合わせたりと、外す際には気にもしていなかった気を使いながらの作業となりますので、取り外しの時より時間がかかります。

■ 完成
天井だけでなく、A・Bピラーも張替え、追加でサンバイザーも張替えたので、「これが純正です」と言われても誰も疑わないような一体感のある仕上がりになりました。お客様にも大変満足頂けました。

■ 施工後記
今回は神奈川県の個人のお客様よりご依頼頂きました、BMWZ4クーペの天井張替えを紹介させて頂きました。お客様が施工にご参加頂く助手割引で、お客様にも多くの施工にご参加頂き、また色々と興味深いお話も聞かせて頂き、私自身最初から最後まで非常に楽しく施工させて頂きました。ありがとうございます。
今後ともお車の事でお困りのことがございましたら、当店で対応可能・不可能に問わず、お気軽にご相談頂けると幸いです。
この度はご依頼誠にありがとうございました。