メルセデスベンツW124の天井が垂れてきた、天井生地が剝がれてきた、浮いてきたという症状は珍しくありません。
この記事では、メルセデスベンツW124の天井が剥がれる原因、DIYによる応急処置、専門業者で張替え、ディーラー修理の費用目安、実際の施工工程まで、天井張替え職人の視点から詳しく解説します。


1 天井剥がれ・垂れ・浮きの原因

原因は天井の裏面に溶着されているウレタンスポンジの加水分解によるものです。加水分解とはその字のごとく、水分子が反応物や化合物の結合部位に入り込むことにより反応物の結合を切る(分解する)化学反応の事で、熱が加わることにより反応速度が速まります。
自動車の天井の場合、6月の梅雨時に天井材であるウレタンが湿気を含み、7月・8月の暑さで化学反応が促進されます。それを何年も繰り返すうちに天井生地を維持することが出来なくなり垂れ・剥がれ・浮きが発生します。同じ車種・型式でも自動車の保管状況により反応速度が変わります。

2 天井剥がれ・垂れ・浮きの対策

予算・工期・仕上り品質によっていくつかの対策がありますので、順に説明致します。オーナー様のご予算やこだわりに合わせてその対策を選択されるのがベストです。

① 低予算(1000円以下)ピン留め

ディーラーや専門業者に施工を依頼するのではなく、ご自分で修理する方法です。ホームセンターで虫ピンや待ち針そしてタッカーを購入し、天井の剥がれ・垂れ・浮きの部位に刺して留めます。純正のような見栄えにはなりませんが、綺麗に整列させて刺すとかなり綺麗に仕上がります。これは業者に依頼するまでの応急処置としても有効な手段です。
※注:低予算で済ませる為、剥がれ・垂れ・浮きが発生した生地の裏面にスプレータイプの接着剤を吹き込んで接着する方法は絶対にやめて下さい。必ず綺麗には接着できず表面に接着剤が染み出してきます。また将来的に専門業者に張替えを依頼する際、接着剤が入っていると追加料金を請求される場合がございます。

② 中程度予算(6~15万円)天井張替え専門業者に直接修理依頼

当店のような天井張替え専門業者をネット等で見つけ、その業者に天井修理を依頼する方法です。ディーラーに依頼するより低予算・短工期(当店の場合は当日仕上げ)で済む一方、以下のようなデメリットがございます。
・ その業者の技術力をネットの情報だけでは確かめられない
・ 純正と全く同じ天井生地での張替えにはならない

③ 高程度予算(15~30万円)ディーラーに修理依頼

正規ディーラーに天井修理を依頼する方法です。メリットとデメリットは以下の通りです。
【メリット】
・ ネット等で天井張替え専門業者を探す手間が無い
・ メーカーの方でまだ天井の供給が続いていれば純正天井と交換できる
・ メーカーの供給が終了していた場合、ディーラーは当店のような専門業者に張替えを依頼しますが、
  その仕上がり品質は専門業者ではなく、ディーラーが責任を持ってくれる

【デメリット】
・ 新品交換でも張替えでも施工金額が高価になる
・ 天井張替え業者に直接依頼するよりも工期がかかる

以上、天井剥がれ・垂れ・浮きでお悩みのオーナー様の少しでも参考になれば幸いです。

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以下は上記対策の中程度予算をご選択され、当店にご依頼頂きましたお客様のメルセデスベンツW124の天井張替え修理の実際の作業内容を紹介させて頂く記事です。ご興味のある方はご閲覧頂ければと思います。


3 天井張替え修理作業内容紹介

■ 施工前チェック

施工に入る前に毎回施工前チェックを行います。助手割引の場合はお客様と一緒に、お客様がいらっしゃらない場合はケースバイケースで撮影を行います。作業に入る前にチェックを行う事で施工後の問題点の切り分けが出来、お客様も当店もスッキリ作業を終わることが出来ます。主なチェック項目と対応は以下の通りです。

・室内灯の点灯確認
特にサンバイザーのバニティーランプはあまり使われないお客様もいて、点灯するかどうかわからないという場合もございます。また長く使用していない場合接点に酸化被膜が溜まり、問題が無くても点灯しない場合もございます。いずれにしても点灯しなかった場合、何度か開閉を行い酸化被膜をワイピングにより除去し、それでも点灯しなかった場合は天井を車外に出した後、ランプが切れていないか、断線が無いかの確認を行います。

・天井生地の垂れ具合確認
天井生地が大きく垂れて部品を外すとシートまで垂れてしまう恐れがある場合はタッカーを打って暫定対策を行います。あくまでも天井を車外に取り出すまでの対策です。これを行う事により部品の取り外し作業時垂れて来た生地を頭からかぶってしまう等の問題を回避できます。

・劣化ウレタンのこぼれ状況確認
剥がれて垂れて来た天井生地の隙間から劣化ウレタンがポロポロこぼれて、シートやフロアに飛散していた場合、そのまま作業を進めてしまうと繊維の隙間にベトベトな劣化ウレタンを刷り込んでしまい、後のクリーニングが大変になります。まだこぼれて表面にいるうちに除去するのが吉です。

・メーターのアラート表示確認
エンジン起動時表示されるアラートの有無を確認します。当店ではアラートの解除は出来ませんが、施工後点灯したアラートが施工前からついていたアラートかを区別する為です。

・車内の傷確認
車内内装の内張りやガラスのフィルムに傷が無いか確認します。後部座席側の細かいフィルムの傷はオーナー様でもなかなか気づいていらっしゃらない場合も多いため、確認が必要です。


メルセデスベンツW124天井張替え修理

今回、メルセデスベンツW124ではよく見られる、Bピラーの表皮の浮きが確認されました。この部分も修理は可能ですが、お客様との打ち合わせの結果、「もう少し様子を見る」という事で将来的には修理を視野に入れつつ今回は手を付けないことになりました。

メルセデスベンツW124天井張替え修理

■ 内装部品の取り外し

施工前チェックが終わったらいよいよ内装部品を取り外して行きます。お客様は運転席に座って頂き私は助手席に座ってのフォーメーションとなります。
私と一緒の部品を右と左で同じタイミングで外していくというスタイルです。使用する工具および外すコツを説明させて頂きながらの作業となりますので、難しいことはなく楽しく作業頂けます。

■ 防音断熱材施工

メルセデスベンツW124の場合、ヘッドライナーを車外に取り出すと屋根の鉄板がむき出しになります。このようなお車の場合、防音断熱材の施工が効果的です。その効果は以下の通りです。

  • 夏は車外の厚さをブロック、冬は車内の暖かさの放出を軽減
  • 屋根に打ち付ける雨音を激減
  • 張り替えた天井への熱ダメージ(加水分解)を軽減出来るため寿命延長につながる
メルセデスベンツW124天井張替え修理

■ クリーニング

天井の車外取り出しが成功したら次はクリーニング作業となります。地味な作業ではありますが一番重要な工程です。他のお仕事でも派手な部分よりもその前段階の調査や資料作りをしっかりやる事が、成功につながると思いますがそれと一緒ですね。
当店では以下の3段階でのクリーニングを行っております。

【第一段階】
金属ブラシを使用して劣化ウレタンを除去していきます。裏面と表面を行います。

【第二段階】
アルコール系溶剤で残った劣化ウレタンのベトベト成分を溶かしていきます。マイクロファイバーウエスを使用して手でふき取っていきますのでゴム手袋をはめての作業となります。

【第三段階】
マップランプユニットやアシストグリップ等、へこみ部分はさらに強い溶剤で純正で使われている接着剤も溶かし除去します。この部分は天井の素材を出してしまいます。

メルセデスベンツW124天井張替え修理

■ 接着剤塗布

接着剤を塗布する工程は、残念ながらお客様は参加できない工程となります。せっかくなのでやって頂きたい気持ちもありますが、やはり耐久性・品質を考えるとこちらで施工する必要があるのです。当店の作業にご興味のあるお客様は見学頂いても構いませんし、まかせるから大丈夫というお客様の場合は、昼食に出かけて頂いても構いません。
当店では天井張替えに2種類の接着剤を使用し、塗布方法も刷毛塗りとスプレー塗布の2種類で行っております。まずA接着剤を刷毛で重要部分に塗布ししっかり乾燥させます。乾燥後B接着剤を専用スプレーを使用して先ほどのA接着剤を塗布した部分を含めて全体に吹き付けていきます。もちろん貼り付ける生地の裏面にも吹き付けていきます。
また当店で使用している接着剤はF★★★★(エフフォースター)ランクの接着剤です。
最上位ランクの塗料を使用してはいますが、それでも完全乾燥までに3~4週間かかりますので、若干の溶剤臭が車内に漂う事があります。溶剤系の臭気に敏感なお客様もいらっしゃると思いますので、施工後は換気を多めにお乗りくださいます様お願い申し上げます。

F★★★★(エフフォースター)に関して詳しく知りたい方はこちらから

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■ 生地の貼り付け

この工程も残念ながらお客様は参加できない工程となります。
当店で使用している接着剤には開放推積時間と可使時間というものがございます。開放推積時間とは接着剤を塗布してから貼り付けるまでの時間の事で、ある程度乾燥させてから貼り付けるタイプの接着剤となります。また可使時間とは開放推積時間が終了してから張り付かないくらい乾燥してしまうまでの時間となります。
我々職人はこの可使時間内に作業を終了させないと密着不良を発生させてしまいますので、ある意味時間との勝負となります。またこの可使時間は同じ接着剤同じ塗布方法でも夏場と冬場でその長さが違ってきます。特に冬場は可使時間が短く乾燥が早いため、天井の種類によってはあらかじめ後から接着剤を追加で吹く事を前提とした貼り付け手順で進める事もございます。

■ トリミング・折り返し・穴あけ

ここからお客様再びご参加できます。
参加できるというのは強制ではないという事です。というのも、この工程ではカッターを使用する為、カッターで指を切ってしまう可能性がゼロではありません。お客様の職種の中には「手指に傷がある場合、お仕事をしてはいけない」という社内規定がある職種もあり、もしもカッターで少しでも指を切ってしまった場合お仕事が出来なくなってしまいます。当店で施工されたお客様の中でこの工程を上記理由で辞退された職種は以下の通りです。
・パイロット
・外科医
・SE
よって、上記職種の方はもちろん、カッターに自身の無いお客様は遠慮せずご辞退下さい。
さて、純正の天井は必要最低限の箇所しか折り返されておりませんが、当店では可能な限り全周折り返す方針で施工しています。折り返すことで際の綺麗さおよび耐久性が向上するからです。しかし上手く折り返さないと厚みが出て最終的に内装パーツを組付けた際、その厚み分上手くパーツが組み付きません。よって、折り返し部分が重ならないことが必須となって来ます。そのためには折り返した際折り返し部分が重ならないようなカットが重要です。
未経験のお客様が折り返し部が重ならないようにカットできる方は希少だと思いますので、私の方でカットのガイドラインを引かせて頂きますので、そのラインに沿ってカット頂ければ大丈夫です。

メルセデスベンツW124天井張替え修理
メルセデスベンツW124天井張替え修理

■ 部品組付け

最終工程。張り替えた天井を車内に入れて外した部品を一つずつ組みつけて行きます。「外した部品だからつけられるだろう」と思われがちですが、実は組み付ける方が難しいのです。取り外すときはクリップやネジの位置を意識せず外せばよいのですが、組み付けるときはクリップの穴位置に合わせたり、ねじの位置を合わせたりと、外す際には気にもしていなかった気を使いながらの作業となりますので、取り外しの時より時間がかかります。

メルセデスベンツW124天井張替え修理

■ 完成

純正はビニール素材の天井生地でした。当店ではそのビニール素材を再利用した「張直し施工」も可能ですが、今回はファブリック素材への「張替え施工」でのご依頼でした。今回の施工時間は2時間半程。パリッとした天井に仕上がり、お客様からも高い評価を頂けました。

※張直し施工と張替え施工に関して

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■ 施工後記

今回は千葉県よりお越し頂いた個人のお客様よりご依頼頂きました、メルセデスベンツW124の天井の剥がれ・垂れ・浮きに対する張替え修理を紹介させて頂きました。お客様が施工にご参加頂く助手割引で、お客様にも多くの施工にご参加頂き、また色々と興味深いお話も聞かせて頂き、私自身最初から最後まで非常に楽しく施工させて頂きました。ありがとうございます。
今後ともお車の事でお困りのことがございましたら、当店で対応可能・不可能に問わず、お気軽にご相談頂けると幸いです。
この度はご依頼誠にありがとうございました。


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