ポルシェ911カレラのアルカンターラ天井が垂れてきた、天井生地が剝がれてきた、浮いてきたという症状は珍しくありません。
このページでは、ポルシェ911カレラのアルカンターラ天井が剥がれる原因、専門業者で張替え、ディーラー修理の費用目安、実際の施工工程まで、天井張替え職人の視点から詳しく解説します。
1. 天井剥がれ・垂れ・浮きの原因
原因は天井のアルカンターラの裏面に溶着されているウレタンスポンジの加水分解によるものです。加水分解とはその字のごとく、水分子が反応物や化合物の結合部位に入り込むことにより反応物の結合を切る(分解する)化学反応の事で、熱が加わることにより反応速度が速まります。
自動車の天井の場合、6月の梅雨時に天井材であるウレタンが湿気を含み、7月・8月の暑さで化学反応が促進されます。それを何年も繰り返すうちに天井生地を維持することが出来なくなり垂れ・剥がれ・浮きが発生します。同じ車種・型式でも自動車の保管状況により反応速度が変わります。
2. 天井剥がれ・垂れ・浮きの対策(メリット・デメリット)
既存天井に使用されているアルカンターラ材を再利用しての施工の場合、お客様は以下2種類の選択肢から選ぶのがベストです。DIYを試みて純正アルカンターラ生地をダメにする前に以下2種類からご選択されることをお勧めいたします。
① 天井張替え専門業者に直接修理依頼
当店のような天井張替え専門業者をネット等で見つけ、その業者に天井修理を依頼する方法です。
【メリット】
・ ディーラーに依頼するより低予算・短工期(当店の場合は当日仕上げ)で済む。
・ 当店限定のサービスですが、施工に参加できる。(助手割引)
【デメリット】
・ ネットで専門業者を探す時間がかかる(調査時間や相見積もり時間等)
・ 業者が決定したとしても、その業者の技術力や人柄がネットだけではわからない。
・ アフターサービスの手厚さがわからない。
・ 支払いにキャッシュレス決済未対応の業者もある
② ディーラーに修理依頼
正規ディーラーあるいは購入先の中古車ディーラーに天井修理を依頼する方法です。
【メリット】
・ ネット等で天井張替え専門業者を探す手間が無い
・ メーカーの方でまだ天井の供給が続いていれば純正天井と交換できる
・ メーカーの供給が終了していた場合、ディーラーは当店のような専門業者に張替えを依頼しますが、
その仕上がり品質は専門業者ではなく、ディーラーが責任を持ってくれる
・ 支払いがキャッシュレス決済対応
【デメリット】
・ 新品交換でも張替えでも施工金額が高価になる
・ 天井張替え業者に直接依頼するよりも工期がかかる(1週間~2週間)
・ 純正天井が入手出来たとしても、その天井の製造日が古い場合がある
3. ポルシェ911カレラ天井修理施工費用
① 当店を含む天井張り替え専門業者の場合
施工費用はアルカンターラの下地としてウレタン材を入れるか入れないかによって変わってきます。下地ウレタン材を入れる入れないに関する当店の考え方に関しては以下をご参照下さい。
【施工金額】(概算)
■ 下地ウレタン無し施工・・・90,000円(税込)
■ 下地ウレタン有り施工・・・120,000円(税込)
※ 実際の施工金額は車両の年式・型式・サンルーフの有無・天井の状態により異なります。
正確な金額はお問い合わせ下さい。
② ディーラーの場合
年式・型式・サンルーフの有無により違いはありますが、アルカンターラ仕様のルーフライニングの製品価格プラス工賃は以下となります。
※ 年式・型式・仕様・部品価格・工賃等により金額は異なります。あくまで一般的な費用目安です。
■ 新品天井材が入手できる場合・・・300,000~400,000円
■ 新品天井材が入手できない場合・・・上記専門業者に依頼する為、専門業者価格にディーラーマージンが上乗せされる金額になります。
以上、天井剥がれ・垂れ・浮きでお悩みのオーナー様の少しでも参考になれば幸いです。
4. 実際のポルシェ911カレラ、アルカンターラ張直し施工の紹介
ここからは、実際に当店で施工したポルシェ911カレラアルカンターラ天井の既存生地を再利用した「張直し施工」の紹介となります。今回は東京都の個人のお客様よりご依頼頂いた内容で、お客様が施工に参加される「助手割引」での施工となりました。写真の随所にお客様が登場致しますが、お客様のご了解を頂きスペシャルゲストとしてご出演頂きました。
当店にご依頼頂いた場合の作業の雰囲気を感じて頂ければと思います。
■ 施工前チェック
施工に入る前に毎回施工前チェックを行います。助手割引の場合はお客様と一緒に、お客様がいらっしゃらない場合はケースバイケースで撮影を行います。作業に入る前にチェックを行う事で施工後の問題点の切り分けが出来、お客様も当店もスッキリ作業を終わることが出来ます。主なチェック項目と対応は以下の通りです。
・室内灯の点灯確認
特にサンバイザーのバニティーランプはあまり使われないお客様もいて、点灯するかどうかわからないという場合もございます。また長く使用していない場合接点に酸化被膜が溜まり、問題が無くても点灯しない場合もございます。いずれにしても点灯しなかった場合、何度か開閉を行い酸化被膜をワイピングにより除去し、それでも点灯しなかった場合は天井を車外に出した後、ランプが切れていないか、断線が無いかの確認を行います。
・天井生地の垂れ具合確認
天井生地が大きく垂れて部品を外すとシートまで垂れてしまう恐れがある場合はタッカーを打って暫定対策を行います。あくまでも天井を車外に取り出すまでの対策です。これを行う事により部品の取り外し作業時垂れて来た生地を頭からかぶってしまう等の問題を回避できます。
・劣化ウレタンのこぼれ状況確認
剥がれて垂れて来た天井生地の隙間から劣化ウレタンがポロポロこぼれて、シートやフロアに飛散していた場合、そのまま作業を進めてしまうと繊維の隙間にベトベトな劣化ウレタンを刷り込んでしまい、後のクリーニングが大変になります。まだこぼれて表面にいるうちに除去するのが吉です。
・メーターのアラート表示確認
エンジン起動時表示されるアラートの有無を確認します。当店ではアラートの解除は出来ませんが、施工後点灯したアラートが施工前からついていたアラートかを区別する為です。
・車内の傷確認
車内内装の内張りやガラスのフィルムに傷が無いか確認します。後部座席側の細かいフィルムの傷はオーナー様でもなかなか気づいていらっしゃらない場合も多いため、確認が必要です。


■ 内装部品の取り外し
施工前チェックが終わったらいよいよ内装部品を取り外して行きます。お客様は運転席に座って頂き私は助手席に座ってのフォーメーションとなります。
私と一緒の部品を右と左で同じタイミングで外していくというスタイルです。使用する工具および外すコツを説明させて頂きながらの作業となりますので、難しいことはなく楽しく作業頂けます。
特にポルシェ911の内装部品の取り外しで難関なのがBピラーです。ちょっとした治具が無いと取り外しにかなり苦戦します。取り外した後お客様とそのコンセプトを見て、もう少しポルシェの設計には考えてほしかったなという意見で一致しました。当店ではこのBピラーを外す為だけの治具を作成しましたので、外す作業が初めてのお客様でも部品を壊すことなく外すことが出来ました。

■ 天井の車外への引き出し
ポルシェ911カレラの天井を車外に引き出す際はちょっとしたコツが必要になります。ある方法及びルートを通して引き出すと、天井にダメージを与えず車外に引き出すことが出来ます。とはいえ、天井が内装に当たって内装を傷つけるのを防ぐ為、写真の様に天井本体を布で覆うだけでなく、ダッシュボードやシートも布で養生しての引き出し作業を心がけています。


■ クリーニング
天井の車外取り出しが成功したら次はクリーニング作業となります。地味な作業ではありますが一番重要な工程です。他のお仕事でも派手な部分よりもその前段階の調査や資料作りをしっかりやる事が、成功につながると思いますがそれと一緒ですね。
当店では以下の3段階でのクリーニングを行っております。
【第一段階】
金属ブラシを使用して劣化ウレタンを除去していきます。裏面と表面を行います。
【第二段階】
アルコール系溶剤で残った劣化ウレタンのベトベト成分を溶かしていきます。マイクロファイバーウエスを使用して手でふき取っていきますのでゴム手袋をはめての作業となります。
【第三段階】
マップランプユニットやアシストグリップ等、へこみ部分はさらに強い溶剤で純正で使われている接着剤も溶かし除去します。この部分は天井の素材を出してしまいます。

■ 接着剤塗布
接着剤を塗布する工程は、残念ながらお客様は参加できない工程となります。せっかくなのでやって頂きたい気持ちもありますが、やはり耐久性・品質を考えるとこちらで施工する必要があるのです。当店の作業にご興味のあるお客様は見学頂いても構いませんし、まかせるから大丈夫というお客様の場合は、昼食に出かけて頂いても構いません。
当店では天井張替えに2種類の接着剤を使用し、塗布方法も刷毛塗りとスプレー塗布の2種類で行っております。まずA接着剤を刷毛で重要部分に塗布ししっかり乾燥させます。乾燥後B接着剤を専用スプレーを使用して先ほどのA接着剤を塗布した部分を含めて全体に吹き付けていきます。もちろん貼り付ける生地の裏面にも吹き付けていきます。
また当店で使用している接着剤はF★★★★(エフフォースター)ランクの接着剤です。
最上位ランクの塗料を使用してはいますが、それでも完全乾燥までに3~4週間かかりますので、若干の溶剤臭が車内に漂う事があります。溶剤系の臭気に敏感なお客様もいらっしゃると思いますので、施工後は換気を多めにお乗りくださいます様お願い申し上げます。



■ 生地の貼り付け
この工程も残念ながらお客様は参加できない工程となります。
当店で使用している接着剤には開放推積時間と可使時間というものがございます。開放推積時間とは接着剤を塗布してから貼り付けるまでの時間の事で、ある程度乾燥させてから貼り付けるタイプの接着剤となります。また可使時間とは開放推積時間が終了してから張り付かないくらい乾燥してしまうまでの時間となります。
我々職人はこの可使時間内に作業を終了させないと密着不良を発生させてしまいますので、ある意味時間との勝負となります。またこの可使時間は同じ接着剤同じ塗布方法でも夏場と冬場でその長さが違ってきます。特に冬場は可使時間が短く乾燥が早いため、天井の種類によってはあらかじめ後から接着剤を追加で吹く事を前提とした貼り付け手順で進める事もございます。

折り返し部分に接着剤を吹く際は、飛散防止のための再養生を行います。生地の端部までしっかり接着剤を乗せようとした場合、吹いた接着剤が表面に回り込んでしまう事を防ぐ重要な作業となります。

■ 折り返し
折り返し部分に接着剤を塗布したら、一定のフラッシュオフ(乾燥)の後折り返しながら貼り付けていきます。お客様の手つき、プロっぽいですよね。

■ 張直し完成
今回は張直しなので、穴あけ作業はありません。穴の位置、端部の位置全て完璧に仕上がりました。また、今回は下地ウレタンを使用しない施工でしたので、細かいプレスラインもくっきりし、キレのある天井デザインになりました。

■ 部品組付け
最終工程。張直した天井を車内に入れて外した部品を一つずつ組みつけて行きます。「外した部品だからつけられるだろう」と思われがちですが、実は組み付ける方が難しいのです。取り外すときはクリップやネジの位置を意識せず外せばよいのですが、組み付けるときはクリップの穴位置に合わせたり、ねじの位置を合わせたりと、外す際には気にもしていなかった気を使いながらの作業となりますので、取り外しの時より時間がかかります。

■ 完成
全ての部品を組み付けたら、全ての車内灯の点灯確認及び車内への劣化ウレタンのこぼれが無いかを確認し、本日の全ての作業の終了となります。綺麗に元通りに復元できました。

■ 施工後記
今回は東京都の個人のお客様よりご依頼頂きました、ポルシェ911カレラのアルカンターラ天井張直しを紹介させて頂きました。お客様が施工にご参加頂く助手割引で、お客様にも多くの施工にご参加頂き、また色々と興味深いお話も聞かせて頂き、私自身最初から最後まで非常に楽しく施工させて頂きました。ありがとうございます。
またポルシェ911カレラ・ケイマンやカイエンに定番の、ドアの内張り上部の浮きの初期症状も確認出来た為、次回修理にお越し頂きます。初期段階での施工の方が仕上がりが良く、金額も抑えられます。
その他、今後ともお車の事でお困りのことがございましたら、当店で対応可能・不可能に問わず、お気軽にご相談頂けると幸いです。
この度はご依頼誠にありがとうございました。
4. その他のポルシェ911施工ページ
・ ポルシェ911天井張替え修理(剥がれ・垂れ)全工程紹介│静岡県牧之原市
・ ポルシェ911(991)天井張替え(垂れ・剥がれ・浮き)│埼玉県八潮市
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